Google で Google Maps のデザインをされている 石塚 尚之 さんの講演。じっくりゆっくりと問いかけるようなプレゼンで会場はまた一味違った雰囲気に包まれていました。
自己紹介
- スタンフォードで説得工学を学んだあと US で就職活動、150社以上に応募したがリーマンショックの影響もあって5社程度しか面接にたどり着けなかった。紆余曲折あった中で最後のチャンスで Google 入社。
Google のデザインの特徴
- 原稿用紙5枚:PC で Google 検索したときにファーストビューで出てくる文字数。
- しかしユーザーは平均10秒以内で情報を見つけて検索結果からすぐ他ページに遷移できている。
- ユーザーが求めている情報を的確に返すということを重要視している。
- 重要な情報がすぐに見つかるようにフォーカスを設計している。
- "ラーメン 地図" の場合は店の評価
- "オバマ" の場合は最新ニュース
- "白鳳" の場合は試合の結果
- ユーザーが何を求めているかを推測し、賢く答えを返す:必要以外の情報はとにかく載せない
Google の開発チームについて
- PM + Eng + UX で構成され、アイデアを練る段階から UX チームが入る。
- UX チームの構成
- 調査参加者リクルーター
- ユーザーリサーチャー
- 世界各国の乗り換え案内について調べてもらう。自分がちょっと行って調べるだけではただの旅行者としての経験になってしまう
- UXデザイナー
- ウェブデベロッパー
- ビジュアルデザイナー
- コピーライター
- 世界中のプロダクトマネージメント、エンジニア、UXチームが協力し、ひとつのチームとして活動
Google Maps の UX について
- 世界中の交通機関をひとつの UI で表現できるようにというリクエストがあった。
- 町も人も特徴が違う。
- Google Maps の UX がいかに作られたか?
- 12年にもなる歴史の長いプロダクト。
- メニューバーが延びすぎてしまったときはサービス自体を削除した。
- 必要ではない情報を画面に載せない。トップページでは3つのボタンにしぼった。
- 乗り換え検索では普通条件設定が最初からあるが、プライオリティを下げて最初のビューでは出発地 - 目的地 だけを設定させるようにした。
- また利用シーンから考えて現在時刻からの検索が普通であると判断した。
- ビデオチャットで必ず海外のチームとのコミュニケーションを行った。
- 少人数のグローバルチーム、生まれ育った国や国籍が違うチームだった。
- アメリカからは時刻どおりに電車が来ないから時間を表示しなくしたり色を薄くして欲しいというフィードバックがあった。
- 一方でロンドンからは目安になるので時刻表示はあったほうがよいという意見。
- グローバルなチームを編成することで世界各地を飛び回らずともその場でシミュレーションできた。
- 意見をまとめるためには、(特に紛糾したときは)リーダーが判断を下す、ときもあるが 原則全会一致になるまで話し合う 。かつ チームメイトを信頼する、しないと意見はまとまらない。
- まったく新しいアイデアが世の中で機能するには誰もわからないし不安。また自分自身は新参者だったりしてある意味、突貫チームだった。
- 信頼関係を気づくための3つのアプローチ
- ビデオチャットを1日2、3時間するより必ず一緒に会って話をする。
- 相手がちゃんと自分を信じてフィードバックをくれていることがわかった。
- ただしグローバルなチームだと物理的に会えない。
- バーチャルコーヒー
- テーマを決めて話すのではなく、お茶をするような雑談が信頼関係を作るのに必要だった。
- ただしスピーカー越しの英語は少し苦手だった。
- メールを頻繁に書くようにした。
- テレコンのフォローアップ。ゆっくり考え、きちんと伝えられる。
- 自分が深く考えていることを知ってもらうことも大切。
- ビデオチャットを1日2、3時間するより必ず一緒に会って話をする。
- さらにディスカッションの雰囲気作りが大事だった。
- 全員がフラットな立場で意見が言える文化がある。
- それぞれの意見をリスペクトする、きちんと返事を返す。
- 現場担当者の意見を尊重して上司が意見を変えたことがあった。
スイスでの話
- スイス出張で偶然出会った夫婦が Google Maps を使っている様子を見て、一般の人が地球の裏側で使ってもちゃんと動いていることがわかった。
- 乗り換え回数が一発でわかるアイコンだけのデザインを提案していたことがある。
- 詳細が出るとどれが便利かわかりづらいと思っていたが、文字を入れたほうがよいという意見もあり自分の意見を下げてそちらを採用した。
- 結局、自分のアイデアを押し通していたらスイスで出会った夫婦は同じアイコンでも所要時間がなぜ 2:40 と 3:06 と違うのかわからなかった。
所感
同じく Google での開発を描いた Team Geek でも HRT (Humanity(謙虚), Respect(尊敬), Trust(信頼)) の重要性が説かれていたけど、今回の内容も重なる部分が大きいように思えました。
あとは冒頭の自己紹介であったようにスタンフォード大学の Persuasive Technology Lab の BJ Fogg 先生のもとで勉強されていたこともあるそうで、むかし説得工学に絡んでいた身としてはその分野の方が Google Maps のようなプロダクトを手がけていらっしゃると知って勝手に嬉しくなりました。